先の連休の最終日、多摩の山里で一人暮らしをしている義父をケアするために、妻と出かけた。
途中、食料品を買うために大きなモールの食品売り場に入ると、おはぎがたくさん並んでいて、今日がお彼岸だとその時に気づいた。迂闊にも、11年前のお彼岸を前にして自宅で亡くなった義母を偲ぶ日であることも、すっかり忘れてしまっていた。
義母の仕事部屋は亡くなったとき、そのままである。
多趣味な人で、織り、編み、刺繍、人形づくりなどに入れ込み(よく展示会を行った)、晩年は万華鏡づくりに没頭したりしていた。
専門は彫刻。実際に教えを受けたのかどうかは知らないが佐藤忠良氏と親しく、よく氏のアトリエに出入りしていた。自宅に遺された作品は、しかしとても少ない。女性の裸像はすべて少女時代のカミさんがモデルだそうで、いつも嫌々やらされたとカミさんはいう。
天窓から柔らかな光が入り、自宅の横を流れる川音が微かに聞こえるこの部屋はとても快適だ。机の上の棚には織物用の色とりどりの毛糸、引き出しを開けるとチロリアンテープや小さな工具などが、まるで先ほど仕舞い込まれたかのように並んでいる。
山好きで、あれほど元気だった人が、C型肝炎のせいでみるみる元気を失っていった。義母にとって、この部屋で一日を過ごせないことはさぞ無念だったに違いない。